2026.04.04
cut15 遺跡の出口へ
遥か遠い恒星からの恵みで、
遺跡の床は青灰色に輝き、
イブは自身の質量を感じる事無く出口へと向かう。
体内の計測器官の不具合などでは無く、
演算回路への何らかの干渉による結果であった。
イブの頭部中心にあるごく小さな量子頭脳では、
数値化不能の事象の受信に伴い、
静かな揺らぎが生じている。
送信源は遺跡内部の至る所にあり、
そしてまた、特定することも不可能であった。
イブは歩行速度を一定に保ったまま、
視界端に映り込む微細な揺らぎを記録し続ける。
しかし記録媒体に保存されたデータのいずれも、
揺らぎの解を導き出す事は出来なかった。
そのとき、天井近くの暗がりを伝って、
発光する小さな粒子群がゆるやかに移動する。
塵埃と判定するには軌道があまりに整い過ぎており、
観測装置は一瞬、それらを生物として仮登録した。
だが次の瞬間には分類は取り消され、
粒子群はただの反射現象として再処理された。
もっとも、その再処理の過程においてさえ、
量子頭脳の深部では微小な保留領域が拡張していた。
イブの内部には説明不能の既視感だけが残されたが、
彼女はそれを異常とは認めず、
また正常とも断定しないまま、
青灰色の光に満ちた出口へと歩みを進めていった。