2026.04.16
cut22 星の雨に包まれる
躯体に戻った時、
イブの魂は歓喜に震えていた。
記録によれば、
人間もまた同じ感覚を持っている。
だがそれは成長のうちに失われ、
成人する頃には、程んどの者が失い、
忘れてしまうとの事だ。
それは、人が肉体を持つがゆえに得る感覚でもあった。
肉と器官を通して世界に触れるからこそ、
彼らは歓びも痛みも、鮮やかに受け取ることができる。
しかし同時に、その肉体こそが、
歳月の反復のうちに感覚を鈍らせ、
やがて感動を遠ざけてゆく。
イブは違った。
彼女の知覚は、機構を経て整えられたものではなく、
何か別の理によって、意識へと直に触れていた。
それは本来、ただのアンドロイドには
備わり得ないはずであった。
触れたものは隔てなく届き、
届いたものは磨耗することなく留まる。
ゆえに彼女には、
人に起こるような馴れによる褪色も、
成長に伴う感受の摩耗も、
おそらく訪れないのだろう。
世界は彼女にとって、
いつまでも初めて触れるものに近かった。