2026.03.28
cut3 姿なき救済者
目を開くと見知らぬ天井がある。
古い家屋らしい染みと細かなひびの走る天井。
身体を起こそうとして
自分の各部に応急処置の跡があることに気づく。
完全ではないが、
必要な箇所だけは的確に手が入っている。
誰かが私を修理した。それだけは間違いなかった。
壁際の棚には日用品や小物が雑多に積まれ、
長く人が暮らしてきた気配だけが静かに残っていた。
視線を右に向ける。
テーブルの上に食べ物と飲み物が置かれている。
その横には工具。
精密機器の分解と補修に使う類のものだ。
金属部品、接続端子、細いケーブル。
さらに数冊の技術資料と、手書きのメモまである。
看病と修理。
その両方を、同じ人物がやったのだろう。
そう考えるのが自然だった。
だが、部屋には誰もいない。
戸口にも、窓辺にも、人の姿はない。
さっきまでそこにいたような気配だけが、わずかに残っている。
私は黙って室内を見回す。
救われたことは理解できる。
誰かが私を見つけここまで運び、
直せる範囲で直したのだ。