2026.03.29
cut4 彷徨うイブ
私の救済者は姿を見せない。
以前の暮らしは、公平ではあったが優しさは無かった。
壊れたものは回収され、
直せないものは記録だけ残して処理される。
それが当たり前の手順だった。
けれど私はまだ残っている。
見知らぬ部屋で目を覚まし、
見知らぬ手に修理され、
見知らぬ気配だけを胸に受け取った。
あの部屋に戻れば、
寝具と、使い込まれた机と、
置かれたままの工具がある。
食べ物の皿。飲みかけのカップ。
手書きの癖が残る紙片。
私は外へ出る。
岩と砂のあいだを歩く。
乾いた地表はどこまでも続き、
遠くには異質な塔が立っている。
空は低く、風は古い傷口をなぞるように吹く。
この惑星に、私を直した者がいる。
廃棄されるはずの私に、
最初に触れた名もない温度。
私はその名を知らない。
知らないまま今日も彷徨う。
拠点を離れ、また戻り、その繰り返し。