2026.03.31
cut9 無数の扉
整備ロボットたちは変わらず静かに動いていた。
イブはそれを場所を維持するための作業だと思っていた。
だが通路の先に並ぶ無数の扉を見たとき、
彼らが守っていたのは居住区ではなく、
この扉の列そのものではないかと思ったのだ。
イブはこの区画で開いた扉を目にしていない。
ロボットたちがこれだけ作業しているにも関わらず、
イブは目にしたことが無い。
そしてある扉を境に、光り方が違う事に気づく。
イブはその扉に近づく。
ロボットたちは一瞬強く反応したが、
一時の停止の後、またいつも通りに作業を開始する。
何かあるとイブは思った。
そして中を見たいという抑えがたい衝動を感じる。
イブはここで平穏に暮らすつもりでいた。
だが今は、何かに期待する事を押さえられない。
胸の奥で眠っていたはずの灯が、
誰に呼ばれたでもなく揺れ始めていた。
イブは扉の前に立つ。
平穏を失うかも知れない事に不安を感じつつも、
尚、手を伸ばす。
それは、自力では抗えない何かであった。