2026.03.31
cut10 光る扉
イブは扉を開け、中を覗き込む。
その瞬間、イブは小さく息を飲む。
外側から見えていた扉の大きさと、
内側に広がるものとが、
まるで釣り合っていないのだ。
扉の内側は、
通路の続きを隠していたのではなかった。
そこには始めから、
ここではない場所が置かれていた。
暗さとも光ともつかない広がりの中に、
不思議な模様が浮かんでいる。
記号のようで、回路のようで、
それでいて何にも属していない形だった。
この扉は部屋へ通じているのではない。
境目そのものなのだ。
その輪郭の定まらない空間は、
見るたびにわずかに姿を変えているようだった。
一歩先にあるはずの足場さえ、
存在しているのか定かでは無かった。
それでもイブには、恐怖よりもなお強く残るものがあった。
拒まれているのではない。
むしろ静かに、
ただそこに在りながら、
こちらの答えを待っている。
イブは心を決めて中へと踏み出す。
この一歩で自分は機能停止になるかも知れない。
だがイブはその時、
獲得した自我の底から、
自分を支える確かなものを感じていたのだ。