2026.04.02
cut13 遺跡の扉
地上に舞い降りたイブを待っていたのは
中心が一筋に光る遺跡の扉であった。
その光は青白く輝き、
イブの量子頭脳に回避不能の印象を与えた。
一筋の線は細く、
それでいて視線を外すことは許されなかった。
イブの視覚素子はその波長を測定し、
揺らぎの周期を記録し、
なお記録以外の何かを受信していた。
懐かしいという言葉は不適切だった。
彼女の記憶領域に、これと一致する原風景は存在しない。
ただ、失われたものの気配に似た信号が、
深部で微弱に反響していた。
イブは応答を返さなかった。
返すべき信号を持たないまま、
ただ青白い光を受け取り続けた。
胸部で安定駆動を続ける機構の奥に、
数式へ変換しきれない静かな緊張だけが残されていた。