2026.04.07
cut19 失われた住人
土地の起伏や町並みから見て、
百年どころか、
あるいは数世紀は経ているのかもしれない。
地形は円筒の左右をよじ登るように広がり、
いくつもの貯水湖と、
かつて栄えていたのであろう町並みが点在している。
閉じた世界と呼ぶには、あまりにも広大だった。
だが、そこには拭いがたい違和感があった。
円筒内壁の金属的な輝きと
土地との境界はどこか不自然で、
堆積した土砂の在り方も、あまりに大まかだった。
まるで本来そこに根づいたものではなく、
後になって無造作に満たされたかのように見える。
土砂も、失われた住人たちも、
この場所に最初から存在していたのではない。
むしろこの巨大構造体そのものが、
それらよりはるか以前から、
沈黙したままここに在り続けていたのではないか。
見上げた先の光は、空というよりも出口に近かった。
けれど、そこへ至る道筋はどこにも見当たらない。
町は朽ち、森はその痕跡を覆い隠し、
水だけが変わらぬ循環を続けている。
誰かが去ったあとに残されたのではなく、
何かを受け入れるために用意された器、
そんな印象が、胸の奥に冷たく沈んだ。
もしそうだとするなら、ここで暮らしていた人々は、
住人ではなく、
一時的に置かれた
観測対象にすぎなかったのかもしれない。